STEAM Japan Award 2026 提出テキスト
1. 作品/企画/活動の概要説明
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私は「埋蔵文化財研究の危機」に挑みました。埋蔵文化財は文字のない時代を伝える唯一の記録であり知恵の宝庫です。しかし専門職員は7111人から5483人へ22%減少し年間約9000件の発掘負担は増す一方です。兵庫県立考古博物館と豊岡市立歴史博物館に取材し保管場所・後継者・コンテンツ不足の声を聞きました。この危機をAI×最新技術で解決するアプリ「アルケオ!~デジタル考古学テック~」を11ヶ月で開発しました。LiDARで収蔵品を3Dアーカイブ化し、AIが音声で自動解説、SNSで共有し新たな来館者を呼ぶ好循環を計7機能で実現しました。専門家の提案5件を反映し16名のテストで改善し日英で公開中です。
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2. どんな社会課題・地域課題を設定しましたか?
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私が設定した課題は「埋蔵文化財研究の危機」です。 自然科学部の活動で地域の社会課題を探していた時、地元・但馬地域だけで古墳が約6,000箇所もあり、しかも兵庫県は発見数が日本一と知り衝撃を受けました。毎日通る道の下にも遺跡が眠っているかもしれないのに、私自身まったく知りませんでした。発掘済みはわずか100箇所です。なぜこれほどの歴史が知られていないのか?この疑問から博物館の現状を調べ始めました。 埋蔵文化財は、文字記録に残らない暮らしや技術を伝える唯一の物的証拠です。地域のアイデンティティそのものであり、過去の教訓から持続可能な社会を築く知恵の宝庫でもあります。単なる「モノ」ではなく、人類共通のかけがえのない財産です。 しかし今、その財産を守る担い手が絶滅の危機に瀕しています。全国の埋蔵文化財専門職員は1999年のピーク時7,111人から2020年には5,483人へ約22%減少しました。一方で年間約9,000件の発掘調査件数は横ばいのままです。職員一人あたりの負担は年々重くなっています。 この実態を自分の目で確かめるため、兵庫県立考古博物館の椿野さんと豊岡市立歴史博物館の中田さんに直接お話を聞きました。二つの現場から驚くほど共通した3つの課題が浮かびました。「資料が収まりきらない」保管場所不足、「募集を出しても来ない」後継者不足、「近くにあるのに知られていない」アピール不足。椿野さんは「団塊の世代が抜けていく」と高齢化の深刻さを語り、中田さんの館では15年間で専門職員が3人からたった1人になりました。「情報を持っている人が少なくなると、新しい発見が出にくくなる」という言葉に危機の深刻さを痛感しました。 そしてこの3つの不足は個別の問題ではなく、互いに連鎖していることに気づきました。コンテンツの魅力が伝わらなければ来館者が減り、来館者が減れば予算が削られ、予算が削られれば職員が減り、職員が減れば文化財を調査・保存・発信できなくなる。この悪循環を放置すれば、足元に眠る何千年もの歴史が誰にも知られないまま失われてしまいます。私が最初に感じた「なぜ知られていないのか」という疑問の答えが、まさにこの悪循環の中にありました。 「教科書でなく、我々の足元にこそ人類の歴史と未来が眠っている。」中田さんのこの言葉に突き動かされ、私はこの悪循環を断ち切ることを課題として設定しました。
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3. 具体的なスキルもしくはチーム/個人の役割等
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約11ヶ月にわたり、企画・調査・設計・開発・テスト・運用を行いました。課題の発見から解決まで一貫した視点で取り組むためです。元々持っていたスキルはPHPとJavaScriptの基礎のみでした。3Dスキャン、AI連携、サーバー構築、セキュリティ対策は公式ドキュメントや技術記事で学びました。最初はAPIの仕様を理解するだけで何日もかかりましたが、一つ解決するたびに次の技術への応用が効くようになりました。 まず調査・企画力。博物館で専門職員に直接取材し、現場の声から課題の構造を分析して、悪循環を好循環に変える7機能をアプリに落とし込みました。 プログラミングでは、PHPとMySQLでデータベース・認証・音声管理などのサーバー機能を構築し、JavaScriptで3Dモデル表示・VR・地図検索・音声入力・画像処理を組み合わせたフロントエンドを実装しました。スマホ・PC両対応のレスポンシブ設計も行いました。 AI技術では、OpenAI APIでテキスト生成とリアルタイム音声対話を作成し、Google Gemini APIでキャラクターとの記念撮影合成を実現しました。考古学者や土偶をモチーフに44体のAIキャラクターをデザインし、各時代ごとの性格・口調を詳細に設定して縄文から江戸まで10時代をカバーしました。 最も挑戦的だったのが3Dアーカイブ機能です。iPhoneのLiDARセンサーを活用した3Dスキャンの仕組みを設計し、取得した3DモデルをWeb上で誰でも閲覧・AR表示・比較できるビューアとアーカイブ基盤を独自に構築しました。専門知識がなくても誰でもアーカイブに登録できます。インフラ面ではRaspberry Piで自宅にWebサーバーを構築し、NASで3Dモデルと音声データを管理しています。セキュリティ対策と日英二言語対応も自力で実装しました。国立国会図書館の古文書専用軽量OCRを活用して発掘報告書を毎晩自動で読み取り、AIが知識として蓄積する夜間バッチや、解説内容の自動翻訳の仕組みも構築しました。 完成後は専門職員からの提案をすべて反映しました。さらに複数名によるユーザーテストを実施し、アイコン拡大・字幕速度の高速化・読み込み速度の改善などUIを改善しました。全工程を通して取り組んだことで、現場の声を直接コードに反映する一貫した開発ができたことが強みです。
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4. 具体的な実施内容およびアイデア
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悪循環を好循環に変えること。それが解決の核心です。クリーブランド美術館やオルセー美術館ではデジタル化で来館者が増加した実証があります。これを踏まえ、4つのステップが循環して3つの課題を同時に解決する仕組みを設計しました。 第一に「興味喚起」。収蔵品の3Dモデルを360度自由に回転・拡大できるVR鑑賞モードを実装しました。ARで実空間に表示したり2つの収蔵品を比較でき、教科書の写真では伝わらない立体的な魅力が来館のきっかけを生みます。コンテンツ不足を補います。 第二に「理解促進」。国立国会図書館の古文書専用軽量OCRを活用して発掘報告書を毎晩自動で読み取り、AIが知識として蓄積する夜間バッチを構築しました。約2,700件の知識が日々増加中です。この知識基盤をもとに縄文から江戸まで10時代44体のAIキャラクターが収蔵品を音声で解説します。専門家の提案で出土地・時代背景の追加や全国の市史のAI学習も実現しました。AIが解説を担うことで職員の負担を直接軽減し、後継者不足を補います。 第三に「来訪促進」。AI解説付きの紹介動画を自動生成しSNSにワンタップで共有できます。実際にテストでは「動画を見て行ってみたくなった」という声がありました。さらに発掘マップで現在地周辺の博物館や遺跡をGPS連動で案内し、「こんな近くにあったのか」という発見から新たな来館者を呼び込みます。 第四に「体験参加」。来館者自身がスマホのLiDARセンサーを活用して遺物を3Dスキャンし、デジタルアーカイブに登録できます。3D図鑑コレクション機能で繰り返し訪れたくなる仕掛けも用意しました。収蔵スペースなしに文化財をデジタル記録でき保管場所不足に対応します。誰もが記録の担い手になれる点が最大の特徴で、登録コンテンツが新たな興味喚起を生み好循環が自律的に回り始めます。 この4ステップで3つの課題すべてに同時対応します。ユーザーテストでは87%が「興味が高まった」「博物館に行きたくなった」と回答。「無関心だったのに初めて興味を持てた」という声もありました。椿野さんからは「職員の負担軽減になる」、中田さんからは「魅力が伝わるので毎日でも使いたい」との評価をいただきました。日英二言語で一般公開中です。今後は奈良文化財研究所の全国遺跡報告総覧と連携し知識基盤を全国に拡大、学校教育での活用も進めます。
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